柏さんのトブンデスブログ

最近全然カードあんまり触ってないから存在価値が危ぶまれてるブログ。百合いいよね百合。乙女ちゃんがかわいくて生きるのが辛い。

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風来人(1)

とりあえず区切って掲載してみます。
10分もあれば読みきれる量かなぁ…

「ふぅ、やっとついたー」
密林に覆われた山から、疲れきった表情の男が一人降りてきた。
無地に青のトレーナーに緑色の綿でできたズボンという、なんとも安上がりな服装に身を包んでいる。背中には少し大きめのリュックサックを、そして腰には刃渡り三0センチほどの短剣を携えていた。
彼の名はアトラ。今をときめく風来人である。
風来人とは旅人のようなものだ。この手の人間は金欠であると相場が決まっている。そして彼は今、故郷から山を越え、新たな地に足を踏み入れようとしていた。
何故、“新たな地”などと大げさな言い回しをするのかというと、本当に“新たな地”だからである。今アトラが越えてきた山の麓、つまりアトラの現在地には国境があるのだ。そして今、アトラの目の前、三〇メートル程先には、大きな関所がそびえ立っている。その関所を守る門番の人に通行証を見せればお隣の国、「トロウォール」に入る事ができる。
 ふと、アトラは空を見上げた。沈みかけの太陽が、辺りを橙色に染めている。
 そういえば、ここの門は午後五時には閉まるんだっけ。
 アトラはその事を思い出し、慌てリュックから懐中時計をとりだす。非常に年代モノの時計で、ガラスの蓋にはヒビが入っていた。しかし、どんなに外見が古くっても、二本の針はせっせと働いている。懐中時計なんだから、懐に入れろよ!っと突っ込みたくもなるが、生憎アトラのトレーナーにポケットは無い。
 そしてアトラは時計の文字盤を確かめる。五時二五分、千百00秒オーバーだ。噂では、ここの門番はやたらしっかり者らしく、五時を一秒でも過ぎると通してくれないらしい。
仕方ないので、今日は諦めて明日にすることにした。

 日が沈み、辺りは暗くなってきた。カラスがこちらを馬鹿にするかのように、カァカァと鳴いている。
 そんな鳥達からの嫌がらせに耐えつつ、宿はないかとアトラは辺りを見回した。
 が、しかし、目に留まるのは関所と山と、それからただっ広い泥道ばかり。お目当ての宿どころか、建物すらも見当たらない。
 仕方ないので、今夜は野宿することにした。
 アトラはすでに、野宿のプロフェッショナルと言っても過言ではない。貧乏な旅に野宿は付き物だからである。今まで様々な場所で野宿してきたアトラにとって、泥道なんてベッドのようなものだ。
 そのただっ広い泥道のわきに腰を下ろしたアトラは、慣れた手つきで夜を越す為の道具を並べ始める。
 まず、地面に布を敷き、四隅を荷物で押さえる。風で飛ばないようにするためだ。それから、寒さが苦手なアトラは辺りに落ちてる落葉をかき集め、炎の魔法で火をつける。
 そう、アトラは魔法が使えるのである。
 もっとも、アトラの旅の目的は魔法の習得なのだが。
 アトラが七歳の頃、町へマジックサーカスを見に行ったことがあった。マジックサーカスというのは、その名の通り、魔法を使った曲芸のことである。そのとき雷の魔法を使った芸を見て、魔法を使いたいという衝動に駆られたのである。
 熱っぽく冷めにくいっというなんとも一途な性格の持ち主であるアトラは、十六歳になった今でも、魔法を追い求めている。
 が、しかし、今まで二年間、雷の魔法を求めて修行をしてきたにも関わらず、アトラが現在使用できるのは初歩の火属性魔法だけである。
 しかも、本当に初歩の初歩クラスの魔法しか扱えず、こうやって火種を作るくらいで精一杯なのであった。
 ふとそんなことを思い出し、なんだか気分が乗らないアトラであった。
 仕方なく気分を盛り上げるため、リュックの中から貴重な酒を取り出す。アルコール度数七五%という、脅威の数値を誇るお酒である。
 そして金欠なアトラは、その強烈なお酒を大量のお湯で割って飲むのだ。そうすることにより、一本の酒瓶でコップ数十杯分のお酒を楽しむことが出来る。言わば、一種の節約である。
 そんな、酒よりお湯の比率のほうが多い、その何とも酒とは言いがたい飲み物を口にしながら、安上がりな硬いパンを頬張る。
 それから、アトラの虚しい晩酌は一時間ほど続いた。
 お酒(を微量に含んだお湯)を腹が痛むまで飲んだアトラは、荷物も広げたまま、その場で寝息を立て始める。アトラはお酒に弱いのだ。
 そんな無防備な状態のアトラに一人、コートを着た人物が近づいてくる。身長は、アトラより少し低いくらいだろうか。フードを深々と被っているため、男か女かすらわからない。もっとも、アトラは爆睡しているため、フードを被っていなくてもわからないのだが。
 そのコートを纏った人物は、アトラの足元で立ち止まる。
 それからアトラが眠りこけていることを確認し、辺りに散らばる食料を自分の袋に詰め始めた。
 そう、その人物は物取りなのである。
 それから今度はアトラの周りに散らばる荷物を見回した。
 ふと、アトラが腰に携える短剣に気付く。売り払えば結構な額が付くのではないだろうか、そう思ったその人物は、短剣を頂戴しようと一歩足を進める。
 が、その足の先には、アトラが飲み散らかした酒の瓶が転がっていた。
 思いっきり瓶を踏みつけ、そのまま瓶に足を取られたその人物は、派手に前方向に倒れる。
 そして、反射的に両手を地面に付こうとする。が、これまた不運。その両手の先には、寝息とともに微かに上下するアトラの両肩があったのだ。
 その人物は勢いよくアトラの肩に手を付き、それと同時にアトラを跨ぐような形で両膝を付く。
 二度あることは三度ある、っというのは本当らしい。
 三度目の不運、アトラが目を覚ましてしまったのだ。
 そして、目を覚ましたアトラの視界に真っ先に飛び込んできたのは…コートを着込み、頭からフードを被った…女の子。
 その被ったフードからは、桃色の前髪が伺える。顔を見たところ、自分より少し小さいくらいだろうか。
 そして何より…可愛い。
 暗くてよく見えないのだけれど、それでも何故かそんな感じがする。
 そんな女の子が、星一つない夜空をバックにアトラを覗き込んでいる。
 アトラは、酒でのぼせた頭で今の状況について思想を巡らせてみる。
 こんな可愛い女の子が、
 俺の両肩を抑えて、
 俺の上にまたがって、
 俺の顔を覗き込んでいる。
 その可愛い顔で。
 あれ?もしかしてこれって、襲われてる?
 っとなると、この子、もしかして俺に一目惚れ?
 そんでもって、酒で潰れてた俺の寝込みを襲った?
 思想というよりは、妄想に近い考えである。
 まぁしかし、それは仕方ない。今まで山賊や獣には幾度となく襲われてきたアトラでも、女の子に襲われるのは初めてなのだ。しかも、こんな可愛い子に。
 そんなアトラなので、酒で酔っている頭は更に混乱しているのだ。
 そして、この状況でアトラが取った行動は…
 アトラはガバッっと起き上がり、その女の子の肩をつかむ。
 そのまま前に押し倒し、さっきとは逆の状態になる。
「お、お前、名前を名乗れ!」
 完全にのぼせた頭でアトラは怒鳴る。
「あ、えっと、わ、私、エリナって言います…」
 どうやら、その女の子…つまりはエリナも、相当混乱しているようだ。
 何せ、エリナは物取なのだ。今こうやって体を押さえつけられているのは、物取りをした自分を捕まえるため、っと思いこんでいるのである。
 それからエリナは、少し怯えたような声でアトラに話しかける。
「あ、あの、お願いです。兵士隊だけは勘弁してください…ほ、本当に、何でもしますから…」
 兵士隊というのは、今で言う警察のような組織である。世の中の常識として、物取りなどの犯罪者は兵士隊に届けるのが普通なのだ。
 しかし、完全にのぼせているアトラの耳には、『兵士隊』っという言葉は届いていない。
酒に増して変な勘違いをしているアトラには、『何でもしますから』っというワードだけが耳に残った。
「何でも?」
 少し乱暴な口調でアトラが言い放つ。
「は、はい…なんでも…」
「じゃあ…」
 酔った頭で真剣にこの続きを考える。これもアトラの本能なのだろうか。
 そして数秒間悩んだ挙句、アトラが閃いた言葉は…
「…付き合え」
「…へ?」
「俺に、付き合え。」
 どうやら本当は、「俺『と』付き合え」と言いたかったようだが、完全にのぼせた頭ではそこまで回らない。
 エリナは今、自分が言われた言葉の意味を、よぉく頭の中で整理してみる。
 俺“に”付き合え。
 ふと、エリナの頭の中に、最近読んだ冒険小説の一編が浮かぶ。
 その小説の中に、「俺に付き合え」っといって、かっこよく仲間を旅に誘うシーンがある。
 するともしかして、自分より少し年上に見えるのこの男の子は、私を旅に誘っているのだろうか?寝込みを襲い、食料や短剣を盗もうとしたこの自分に、心を開いてくれているのだろうか?
 いや、実際そんなことは無いのだけれど、混乱した人間の思考なんてそんなものらしい。
この人に付いて行こう。と、心に決める。
 それから、決意の言葉を返そうとアトラの方に向き直る。
 が、しかし、アトラ既に自分の隣で寝息を立てていた。
 あまりの寝つきのよさに呆れもしたが、やはりその決意は変わらない。
 明日の朝、しっかり返事をしよう。そう自分に言い聞かせ、エリナもアトラの隣で、静かに眠りへと落ちていった。




これでも長いかなぁ…
ついで文章がヘタレOTL
ここまで読んで下さった方(居るのかな?)ありがとうございした。
一応続き書いてるんで、そのうち公開します。

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コメント


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どうも、初めまして。kuraruと申します。
早速ですが、小説を読ませてもらいました。2もちゃんと読みましたよ。
地の文が最高でした。いや、めっちゃ!!
クスクス笑いながら二人の旅の始まりを想像していました。
また来るので、では。

kuraru | URL | 2007年08月22日(Wed)21:54 [EDIT]


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