柏さんのトブンデスブログ

最近全然カードあんまり触ってないから存在価値が危ぶまれてるブログ。百合いいよね百合。乙女ちゃんがかわいくて生きるのが辛い。

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風来人 第一章(途中ですけど)

一般的な小説に換算すると、21ページ分という微妙な長さ。
まだまだ途中の段階ですが、一通り修正が終わったので公開したいと重います。
一章分簡潔したら再掲載しますので。
とりあえずここまで。

「ふぅ、やっとついたー」
密林に覆われた山から、疲れきった表情の男が一人降りてきた。
無地に青のトレーナーに緑色の綿でできたズボンという、なんとも安上がりな服装に身を包んでいる。
背中には少し大きめのリュックサックを、そして腰には刃渡り三0センチほどの短剣を携えていた。
彼の名はアトラ。今をときめく風来人である。
風来人とは旅人のようなものだ。この手の人間は金欠であると相場が決まっている。
そして彼は今、故郷から山を越え、新たな地に足を踏み入れようとしていた。
何故、“新たな地”などと大げさな言い回しをするのかというと、本当に“新たな地”だからである。
今アトラが越えてきた山のふもと、つまりアトラの現在地には国境があるのだ。
そして今、アトラの目の前、三〇メートル程先には、大きな関所がそびえ立っている。
その関所を守る門番の人に通行証を見せればお隣の国、「トロウォール」に入る事ができる。
ふと、アトラは空を見上げた。
沈みかけの太陽が、辺りを橙色に染めている。
そういえば、ここの門は午後五時には閉まるんだっけ。
アトラはその事を思い出し、慌てリュックから懐中時計をとりだす。
非常に年代モノの時計で、ガラスの蓋にはヒビが入っていた。
しかし、どんなに外見が古くっても、二本の針はせっせと働いている。
懐中時計なんだから、懐に入れろよ!っと突っ込みたくもなるが、あいにくアトラのトレーナーにポケットは無い。
そしてアトラは時計の文字盤を確かめる。
五時二五分。千百00秒オーバーだ。
噂では、ここの門番はやたらしっかり者らしく、五時を一秒でも過ぎると通してくれないらしい。
仕方ないので、今日は諦めて明日にすることにした。

日が沈み、辺りは暗くなってきた。
カラスがこちらを馬鹿にするかのように、カァカァと鳴いている。
そんな鳥達からの嫌がらせに耐えつつ、宿はないかとアトラは辺りを見回した。
が、しかし、目に留まるのは関所と山と、それからただっ広い泥道ばかり。
お目当ての宿どころか、建物すらも見当たらない。
仕方ないので、今夜は野宿することにした。
アトラはすでに、野宿のプロフェッショナルと言っても過言ではない。
貧乏な旅に野宿は付き物だからである。
今まで様々な場所で野宿してきたアトラにとって、泥道なんてベッドのようなものだ。
そのただっ広い泥道のわきに腰を下ろしたアトラは、慣れた手つきで夜を越す為の道具を並べ始める。
まず、地面に布を敷き、四隅を荷物で押さえる。風で飛ばないようにするためだ。
それから、寒さが苦手なアトラは辺りに落ちてる落葉をかき集め、炎の魔法で火をつける。
アトラは魔法が使えるのである。
もっとも、アトラの旅の目的は魔法の習得なのだが。
アトラが七歳の頃、町へマジックサーカスを見に行ったことがあった。
マジックサーカスというのは、その名の通り、魔法を使った曲芸のことである。
そのとき雷の魔法を使った芸を見て、魔法を使いたいという衝動に駆られたのである。
熱っぽく冷めにくいっというなんとも一途な性格の持ち主であるアトラは、十六歳になった今でも、魔法を追い求めている。
が、しかし、今まで二年間、雷の魔法を求めて修行をしてきたにも関わらず、
アトラが現在使用できるのは初歩の火属性魔法だけである。
しかも、本当に初歩の初歩クラスの魔法しか扱えず、こうやって火種を作るくらいで精一杯なのであった。
ふとそんなことを思い出し、なんだか気分が乗らないアトラであった。
仕方なく気分を盛り上げるため、リュックの中から貴重な酒を取り出す。
アルコール度数七五%という、脅威の数値を誇るお酒である。
そして金欠なアトラは、その強烈なお酒を大量のお湯で割って飲むのだ。
そうすることによ、一本の酒瓶でコップ数十杯分のお酒を楽しむことが出来る。言わば、一種の節約である。
そんな、酒よりお湯の比率のほうが多い、酒とは言いがたい飲み物を口にしながら、安上がりな硬いパンを貪るアトラであった。

二時間後…
お酒(を微量に含んだお湯)を腹が痛むまで飲んだアトラは、荷物もでんと広げたまま、大の字で地面に寝転がり寝息を立てていた。
アトラはお酒に弱いのだ。
そんな無防備な状態のアトラに一人、コートを着た人物が近づいてくる。
身長は、アトラより少し低いくらいだろうか。
フードを深々と被っているため、男か女かすらわからない。
もっとも、アトラは爆睡しているため、フードを被っていなくてもわからないのだが。
そのコートをまとった人物が、アトラの足元で立ち止まる。
アトラが眠りこけていることを確認したその人物は、辺りに散らばる食料を自分の袋に詰め始めた。
そう、その人物は物取りなのである。
それから、今度はアトラの周りに散らばる荷物を見回した。
ふと、アトラが腰に携える短剣に気付く。
売り払えば結構な額が付くのではないだろうか?
そう思ったそのコートの人物は、短剣を頂戴しようと一歩足を進める。
が、その足の先には、アトラが飲み散らかした酒の瓶が転がっていた。
思いっきり瓶を踏みつけ、そのまま瓶に足を取られたその人物は、派手に前方向に倒れる。
そして、反射的に両手を地面に付こうとする。
が、これまた不運。
その両手の先には、寝息とともに微かに上下するアトラの両肩があったのだ。
ドスッっと、アトラの肩に手を付き、それと同時にアトラを跨ぐような形で両膝を付く。
二度あることは三度ある、っというのは本当らしい。
三度目の不運、アトラが目を覚ましてしまったのだ。
そして、目を覚ましたアトラの視界に真っ先に飛び込んできたのは…
コートを着込み、頭からフードを被った…女の子。
その被ったフードからは、桃色の前髪が伺える。顔を見たところ、自分より少し小さいくらいの女の子。
そして、何より可愛い。
暗くてよく見えないのだけれど、それでも何故かそんな感じがする。
そんな女の子が、星一つない夜空をバックにアトラを覗き込んでいる。
アトラは、酒でのぼせた頭で今の状況について思想を巡らせてみる。
こんな可愛い女の子が、
俺の両肩を抑えて、
俺の上にまたがって、
俺の顔を覗き込んでいる。
その可愛い顔で。
あれ?もしかしてこれって、襲われてる?
っとなると、この子、もしかして俺に一目惚れ?
そんでもって、酒で潰れてた俺の寝込みを襲った?
思想というよりは、妄想に近い考えである。
しかしまぁ、それは仕方ない。
今まで山賊や獣には幾度となく襲われてきたアトラでも、女の子に襲われるのは初めてなのだ。
しかも、こんな可愛い子に。
そんなアトラなので、酒で酔っている頭は更に混乱しているのだ。
そして、この状況でアトラが取った行動は……

アトラはガバッっと起き上がり、その女の子の肩をつかむ。
そのまま前に押し倒し、さっきとは逆の状態になる。
「お、お前、名前を名乗れ!」
完全にのぼせた頭でアトラは怒鳴る。
「あ、えっと、わ、私、エリナって言います…」
どうやら、その女の子…つまりはエリナも、相当混乱しているようだ。
何せ、エリナは物取りなのだ。
今こうやって体を押さえつけられているのは、物取りをした自分を捕まえるため。
っと思いこんでいるのである。
「あ、あの、お願いです。兵士隊だけは勘弁してください…ほ、本当に、何でもしますから…」
兵士隊というのは、今で言う警察のような組織である。
世の中の常識として、物取りなどの犯罪者は兵士隊に届けるのが普通なのだ。
しかし、完全にのぼせているアトラの耳には、『兵士隊』っという言葉は届いていない。
酒に増して変な勘違いをしているアトラには、『何でもしますから』っというワードだけが耳に残った。
「何でも?」
少し乱暴な口調でアトラが言い放つ。
「は、はい…なんでも…」
「じゃあ…」
酔った頭で真剣にこの続きを考える。これもアトラの本能なのだろうか。
そして数秒間悩んだ挙句、アトラが閃いた言葉は…
「…付き合え」
「…へ?」
「俺に、付き合え。」
どうやら本当は、「俺『と』付き合え」と言いたかったようだが、完全にのぼせた頭ではそこまで回らない。
エリナは、今自分が言われたことの意味を、よぉく頭の中で整理してみる。
俺“に”付き合え。
ふと、エリナの頭の中に、最近読んだ冒険小説の一編が浮かぶ。
その小説の中に、「俺に付き合え」っといって、かっこよく仲間を旅に誘うシーンがある。
するともしかして、自分より少し年上に見えるのこの男の子は、私を旅に誘っているのだろうか?
寝込みを襲い、食料や短剣を盗もうとしたこの自分に、心を開いてくれているのだろうか?
いや、実際そんなことは無いのだけれど、混乱した人間の思考なんてそんなものらしい。
よろしくお願いします、っと返事を返そうとアトラに目をやる。
しかしアトラは、いつの間にか自分の隣で寝息を立てていた。
しかたない、明日の朝、しっかり返事をしよう。
そう心に決めると、エリナもアトラの横で、寝息を立て始めた。

朝。
ガラガラと関所の門を開く音で、アトラは目を覚ました。
うーん、と背伸びをして、眠たげな目を擦る。
ああ、頭が痛い…そうか、昨日は飲みすぎたんだっけ。
とりあえず、荷物をまとめないと。
昨日は片付けもせずに寝ちゃったからな…
さて、まずは何から片付けようか…などと、ボーっとした頭で考える。
まずは食料をまとめて、それから空き瓶や食べカスを片付けて…ってあれ?
昨日散々散らかした筈の食べカスやゴミが、丁寧に布の端に寄せてある。
「あ、おはようございます。」
え?おはようございます?
可愛げな女の子の声が、アトラの背中を刺す。
こんな朝っぱらから誰だろう。っと、声がした方へと振り向く。
するとそこには、桃色のショートカットが印象的な…どこかで見たことがるような少女が立っていた。
えっと、誰だっけこの子…必死に思い出そうとするが出てこない。
「あ、あの、これから長い間、よろしくおねがいします。」
その少女は頬を少し赤らめ、それから少し目をそらして話を続けた。
「あの…、お名前を、教えてもらっていいですか?」
「アトラ…」
「アトラさん、昨日はあんな事をしたのに心を開いてくれるなんて、私感動しました。だから、アトラさん期待に添えるようにがんばります!」
「あのさ…」
「どうかしました?」
「…どちら様で?」

 数分後…

「……っと言うわけで、これからアトラさんにお供させていただきます。」
「あ、あの、エリナさん…」
「あ、そんなにかしこまらないでも、『エリナ』でいいですよ。」
「え、えっと…じゃあエリナ、旅のお供はいいんだけどさ。」
「はい。」
「通行証もってる?」
「へ?」
「今からそこの国境を越えて、お隣のトロウォールに行くんだけど、通行証が無いと通してくれないからさ。」
「そ、そんな…私、通行証なんて、私持ってません。どうすればいいんでしょう…」
「う~ん…」
アトラは考えてみる。
仮に勘違いから始まったとしても、この子は自分に心を開いてくれる。
そんな子が旅のお供をしたいと言っているのだから、断る理由などどこにもない(っと本人は思っている)。
しかも本人曰く、結構凄腕な物取りらしく、何かと手助けをしてくれそうだ。
それに何より、一人だと寂しい。
っというわけで、一緒に隣の国へ行きたい。
う~ん、通行証…
「そういえば、アトラさんはどうやってそれを手に入れたんですか?」
「俺のは、国に発行してもらったんだ。」
「じゃあ私の分も、国に頼んで発行してもらえばいいんじゃないんですか?」
「ここから通行証を発行してくれるお城、そのトレイス城まで、徒歩だと一週間はかかるけど…」
「大丈夫です!一週間くらいなら平気です!」
「いや、でも…」
「善は急げって言いますよね!早く行きましょう」
どうやら行く気満々らしい。
まぁ、これからの一週間でお互いの信頼を深めていくと思えば、城まで戻るのも悪くは無い。
アトラはそう思い、エリナの方へと振り向く。
が、エリナは既に山のほうへ駆け出していた。

木々が生い茂りすぎた山の中、一度来た道でも、逆から通るとまた違った道に見える。
走ってエリナに追いついたアトラは、地図を片手に先導を始めた。
ふもとから戻っているのだから、帰りは上り。
さらに、雲一つ無い空からさんさんと照らす太陽の日差しに、体力を着々と奪われていく。
そんなしんどい状況下でも、二人は他愛ない会話をしながら足を進めていた。
ふと、アトラが太陽を見上げる。
「もうすぐお昼か…」
そう言って、両手で広げた地図を確認する。
「あと十分くらい歩いたら広場にでるから、そこでお昼にしようか。」
「それはいいんですけど・・・あの、アトラさん。」
「何?」
「食料が底をついてますよ。」
「え?」
そういえば今日の朝食、妙に非常食じみた食事だったっけ。
今日の昼までもてば、トロウォールの町で食料を補充できたのだが…
それどころか二人分の食料が必要となるため、お昼まですらもたないのだ。
「あー、えっと、そうなると現地調達になるのかな…」
「この辺り、食べれそうな野草は見当たりませんけど…」
「…」
…あれ?これってヤバイんじゃね?
山の中で食料が無いという事態、運が悪ければ死に至る可能性もある。
適当な野草で食い繋ぐという手もあるが、何せ山の中だ。どんな毒草が混じっているのかわかったものではない。
そんなこんな悩んでいるうちに、広場が見えてきた。
「ねぇ、アトラさん。向こうにテントが見えません?」
「え?」
よぉく目を凝らしてみる。
するとたしかに、いくつかの真っ赤なテントが見える。
「私、お金ならある程度もってるんです。それで食料を分けてもらいましょう。」
ああ、なんてありがたい。そして俺は何て情けないんだ。
こんな自分より小さい(っとアトラは推測する)女の子に、経済面で助けてもらう事になるなんて…
テントを見つけてから五分ほど歩くと、赤いテントがまばらに設置されている広場に出た。
ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ…どうやら、テントは全部で五つあるようだ。
円形に並べられた四つのテントの中心には、一際大きなテントが設置されていた。
しばらく二がテントを観察していると、向かって右手前のテントから一人の青年が出てきた。
二人は、その青年の姿を見て息を呑んだ。
青色の武道着を着込んだその青年は、顔に道化師のようなメイクを施していたのだ。
髪の毛を剃り坊主になったその後頭部から、尻尾を伸ばすかのように一束の髪の毛を背中に垂らしている。
体付きから二十歳くらいだと伺えるそのいかがわしい装いをした青年は、こちらに気付いたそぶりを見せ駆け寄ってくる。
「あの、君達、旅の者かい?」
そう聞かれても、言葉が出ない。
その容姿に、唖然と見とれているのだ。
そんな自分達の様子に気付いたのか、再びその青年から口を開いてくれた。
「あ、僕たちはあちこちで曲芸をして回ってるんだ。今はその稽古の途中だったから、こんな格好をしているんだ。」
なるほど、曲芸団か。
アトラは一人で納得する。
「あ、あの、ピエロさん…」
「ああ、僕のことはピエールって呼んでくれ。芸名だけど、道化師は本名を名乗らないのが慣わしでね。」
「あ、その、ピエールさん。私達、今食料に困ってるんです。あの、お金ならちゃんと出しますから…その、食料を分けてもらえませんか?」
うーん、と、唸り声を上げ、話を続ける。
「多分いいとは思うけど、そういう事は座長に聞かないと解らないからな…。もうすぐ稽古が終わるから、それまでここで待っていてくれ。」
ピエールはそういい残すと、向かって左手前のテントの中へと消えていった。
「ピエール…」
何かを考えているような口調でアトラはそう呟いた。
「どうかしました?」
「いや、どこかで見たことがあるような気がして・・・」
そういって、アトラは思い出しモードに入ってしまった。
うーん…何処で見たんだっけ…。
子どもの頃、何処かで…いや、えーと…思い出せない…
アトラがあまりに苦悩しているように見え、エリナは何か声をかけようかとも思ったが、
集中力が途切れては悪いと黙りこんでしまった。
そのまましばらくの沈黙が続き、十分程の時間が流れる。
その沈黙を打ち破るかのように、向かって左手前のテントから一人の道化師が姿を現す。
先ほどの、ピエールと名乗る青年である。
ピエールはこちらの雰囲気などそっちのけで、手を振りながら駆け寄ってくる。
「ごめん、大分待たせちゃったね。」
「いえ、ほんの数分ですよ。」
アトラがあまりに考え耽っているため、代わりにエリナが答える。
「真ん中の大きなテントに座長がいるんだ。僕が案内してあげるよ。」
そう言って、ピエールが中央のテントの方向に向き直る。
それから、ピエールが一歩足を踏み出そうとしたとき…
「思い出したぁぁー!」
喜びと達成感に満ち溢れた叫び声が上がる。
「あの、ピエールさん。たしか、九年くらい前だったと思うんですけど…トリネルの町で舞台に立ったことはありませんか?」
「確かにあるけど…君がそれをどうして知ってるんだい?」
「俺が七歳の頃、トリネルの町でその公園を見たんです。あの時に、雷の魔法を使っていた道化師の方は、今どうしてるんですか?」
「雷の魔法…レイザのことか。生憎彼は、数ヶ月前にこの劇団から退団してしまっててね…君、彼の知り合いかい?」
「いえ、そういうわけじゃなくて…実は俺、彼の魔法に魅了されて、魔法修行の旅をしてるんです。」
この話は、昼間エリナに話している。
しかしエリナは二度目だというのに真剣な眼差しでアトラの話に聞き入っていた。
アトラの話が一段落したところで、ピエールは二人をテントのほうへと促した。
さっきまで遠巻きに見ていても大きかったテントだが、近くで見るとその大きさがはっきりわかる。
そこら辺の民家よりも全然大きく、テント周りに設置してあるテントの三倍ほどの大きさがある。
ピエールが入り口を開けテントの中に入ると、一人の老人がテントの中央にある椅子に腰掛けていた。
どうやら、その男こそがこの劇団の座長らしい。
その座長が座った椅子の前には直径五〇センチほどの丸机が置いてある。
テントの隅には、荷物が詰まった袋やら、なにやら重そうな木箱が所狭しと並んでいる。
「座長、こちらの旅人達が話があるそうで。」
ピエールはそう言って、座長の左後ろに控える。
「うむ。何か御用かな?」
掠れたよぼよぼ声で、アトラたちにそう尋ねる。
「あの、座長さん。私達今、食料に困ってるんです。…それで、あの、お金なら払いますから、食料を分けてもらえませんか?」
「むぅ。食料なら、タダで分けても構わんのじゃが…」
「…じゃが?」
アトラが尋ねる。
「今ちぃとばかり、困ったことがあってな…食料をタダでやる代わりに、こちらの頼みも聞いてもらえんかな?」
「はい、食料のためなら何でも。それで、その頼みって何ですか?」
「実はな、この劇団はトレイス城の城下町で公演をすることになっておってな、そこを目指して移動しておったのじゃが…この先にある橋がつい最近、盗賊によって壊されてしもうたのじゃ。そんなわけで、ちぃと遠回りをせねばならんでな。」
トレイスといえば、現在のアトラ達の目的地だ。
「トレイスまでの道から少しそれた所に、川の下を通る地下トンネルがある。そこを通れば、川の向こうに渡れるのじゃが…なに、そのトンネルは最近まで誰も使う者がおらんでな、今ではトロールの巣になってしまっとるのじゃ。」
「つまり、そのトロールをトンネルから追い出せばいいってことですか?」
「うむ、そういう事じゃ。引き受けてくれるかな?」
「はい、一応旅人ですから、大丈夫ですけど…その代わり、この劇団の馬車に俺達も乗っけてもらえませんか?自分達も、トレイスが目的地なんで。」
「うむ、それくらいなら構わんよ。では、決まりだな。出発は明日の朝じゃ。それまで、北側のテントで休んでおきなさい。」
「はい。」
アトラとエリナは声を揃えて返事をすると、座長に一礼し、それから進行方向を百八十度変えテントから出て行った。
その二人が出て行く際、座長の後ろに控えたピエールは、アトラが腰に下げているその短剣を、じっと睨みつけるかの様に見つめていた。

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